2019年11月 世界初の印刷方式による有機ELディスプレイ量産のラインが稼働開始すると発表がありました。JOLEDによる印刷方式は以前にも紹介をいたしておりましたが、あれから約2年の歳月を経て漸く量産体制が確立されました。基板サイズは液晶ディスプレイ で言えば5.5世代基板サイズ (1,300mm×1,500mm)で月産2万枚の生産能力を備えているようで、中型サイズ(10~32型)のディスプレイを生産していきます。32型よりも大きい大型サイズは韓国製ディスプレイが幅広く採用されておりますが、将来的には大型市場への参入も考えられますので今までの様に安穏としていられずJOLEDの動向に戦々恐々としているのではないでしょうか。中国の脅威も当然ありますが。

生産コストが大幅に下がると言われる印刷方式ですが、それでは同じ印刷方式をマネして各社は開発をすすめればいいのではとなるわけですが、JOLEDの技術はどこもまねのできないほど優れており、コア技術を内製化している事で技術流出しにくい強みを持っています。液晶ディスプレイの時は同様に真空装置からの脱却によってコストが下がり液晶テレビの普及に繋がりましたが、コア技術である液晶塗布方式はシャープ内製技術ではなく、装置メーカーがその技術を持っておりました。持っていたといっても実は装置メーカーが開発したのではなくある外部からコア部分を持ってきて搭載したと言ったほうが正しいです。そもそも他の分野で使用されていたものを接液部の部材を変えて使えるようにし液晶仕様に改造したのです。コア技術はその他にもフィラ入りの銀ペーストの塗布でも使用できcosmoセンサーのダイアタッチの描画にも活用されておりました。ちょっとそれてしまったので話を戻そう。その為、台湾など海外へ装置が流れ生産コストが安い地域で生産されたパネルは日本から工場を奪い、最大手のシャープも自分の足で立っていられなくなる程追い詰められました。かつて、産業のコメと言われた半導体がそうであった様に液晶も必然的な流れで生産コストが安い海外には勝てなかったわけです。

しかしながら、完成品としてのものづくりでは負けてもそれをつくる製造装置、電子部品、材料など私たちの目に直接触れない所でその優れた技術力が完成品を支えています。地元の京都では任天堂やオムロンがメーカーとして有名ですが、京セラや村田製作所、ローム、日本電産、堀場製作所、島津製作所、など数多くの企業が製品を支える縁の下の力持ちばかりです。資源が少ない日本が国力を高めるにはまねのできない技術力が必要不可欠だったわけですが、そのことが今の産業構造を確立させた面もあるかもしれません。

今までを振り返ると、製鐵、半導体、液晶ディスプレイは製造技術と製造装置の流出がメーカーの衰退をまねいてきました。これらの教訓を生かし、これからはまねのできない技術力で競争力を高めコストパフォーマンスを上回るコア技術を門外不出とする事はもちろんですが、お金になびかない日本の技術者を育てる土壌を企業は惜しまず確立させなければならない。